「なぜネイティブスピーカーは流ちょうな英語を聞き取れるの?」と疑問を抱く方が多いです。ネイティブスピーカーは「リエゾン」という技術を用いて会話を聞き取っています。この記事では、英語におけるリエゾンの定義から具体例、練習方法までを解説します。
リエゾンはリスニングやスピーキング能力の向上に不可欠な技術です。リエゾンの基本を理解して、英語力の向上に役立ててください。
英語のリエゾンの基礎知識
リエゾンには基本的なルールがあります。ルールの習得によりリエゾンに関する知識が深まり、リスニングやスピーキングなど英語スキルの向上が可能です。
リエゾンの定義
リエゾンとは、単語と単語が音でつながる現象を指します。「連結」を意味するフランス語が由来です。
英語を話す際、リエゾンを上手に使うことでスムーズかつ自然なリズムが作れます。単語の最後の音と次の単語の最初の音を連結させたり、周囲の音によって発音が変化したりするなど、複数の種類があります。
リエゾンは母音で終わる単語と母音で始まる単語、あるいは子音で終わる単語と母音で始まる単語が続く際などに見られる現象です。リエゾンのマスターにより発音がネイティブスピーカーに近づくため、コミュニケーションがよりスムーズになります。
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英語のリエゾンの種類
リエゾンには、以下の5種類があります。リエゾンを使いこなすためには、それぞれの特徴を把握することが欠かせません。
- 連結(Linking)
- 脱落(Elision)
- 同化(Assimilation)
- はじき音(Flapping)
- 弱形(Weak Forms)
連結(Linking)
連結(Linking)は単語と単語の発音がスムーズにつながる現象を指します。単語の最後が子音、次の単語が母音で始まる場合や「go on」のように両単語が母音でつながる場合によく起こります。
連結により単語間が1つの連続した音として認識されるため、自然な単語のつながりが表現可能です。音の連結は、ネイティブスピーカーの発音を真似することが上達への近道です。
脱落(Elision)
脱落(Elision)とは、特定の音が話し言葉の中で省略される現象を指します。発音が難しい場合や、話すスピードが速いときによく起こります。「camera」が「camra」のように母音を省略して発音されるのが脱落の一例です。
略語や口語表現では、単語の中間に位置する音が省略されやすくなります。「Christmas」を「Chris’mas」と発音したり、「must be」を「mus’ be」とする場合が良い例です。助動詞や前置詞が後続する単語と結合する際にも、脱落が起こりやすくなります。
脱落はリスニングを難しくする要因の1つです。ネイティブスピーカーの発音を正確に理解するためには脱落のルールを知り、慣れることが不可欠です。脱落の理解度が英語学習の習熟度に直結します。
同化(Assimilation)
同化(Assimilation)とは、単語間の隣り合う音が影響を与えて発音が変わる現象を指します。同化による変化は言葉をスムーズかつ話しやすくするために重要です。「input」が「imput」と聞こえるのは、同化によるものです。
同化は単語内だけではなく単語間でも発生します。「ten boys」が「tem boys」となるように、単語のつながりがスムーズでリズム感のある自然な英語に変わります。
同化には多くの種類があり、特に単語の最後の子音と次の単語の最初の子音が変化しやすいです。完全に別の音に変わる全同化と、音の一部が変わり少し異なる音に聞こえる部分同化があります。
同化された音を理解するためには、文脈や前後の音を意識してください。同化された音は聞き取りにくいため、慣れが必要です。同化の理解を深めると、英語の発音が自然になります。
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はじき音(Flapping)
はじき音(Flapping)は、特定の子音が軽いタップするような音に変わる現象です。アメリカ英語でよく見られます。アメリカ英語では「t」と「d」の発音がはじき音の影響を受けやすく、母音の間にある場合は特にはじき音が生じやすいです。
はじき音が発生すると通常の発音とは異なるため「t」と「d」の区別がつきにくくなります。「better」の「t」がはじき音となり「beder」と発音されるケースが一例です。
正しいはじき音を習得し、適切に聞き取れれば英語のリスニング能力の向上が目指せます。
弱形(Weak Forms)
弱形(Weak Forms)とは、単語の中であまり強調されない音が軽く発音されることを意味します。英語では特に助詞や冠詞、一部の動詞などで弱形が発生しやすいです。日常会話に頻出する「can」は「cn」と軽く発音され「the」も弱形では「ðə」と短く曖昧に発音されます。
弱形の単語は発音が短くなることで発声スピードが保たれ、会話がスムーズになります。ネイティブスピーカーは弱形を頻繁に使うため、弱形のパターン習得により自然な英語が理解できるでしょう。
英語のリズムやパターンに注目しながら弱形を学ぶことが、英語能力の向上に有効です。弱形の理解がリズム感を養います。実際の会話に近い形での練習によって、コミュニケーション能力の向上にもつながります。
英語のリエゾンの具体例
リエゾンの具体例を覚えてパターンを理解すれば、効果的な学習が可能です。リエゾンの代表的なパターンは下記のとおりです。
- 子音と母音がリンクするケース
- 母音と母音がリンクするケース
- 子音と子音がリンクするケース
- tやdがはじき音となるケース
パターンに当てはめた練習で、リエゾンを身につけましょう。
子音と母音がリンクするケース
子音で終わる単語と母音で始まる単語が隣り合うときに、発音は自然とつながります。「turn off」の「turn」の最後の「n」と「off」の最初の「o」が滑らかにつながることが一例です。
子音と母音のリンクは会話をスムーズにする一方で、リスニングの難易度が高くなります。子音と母音のリンクをマスターすることが、リスニング力の向上に欠かせません。
母音と母音がリンクするケース
母音と母音が隣り合う場合にもリエゾンが発生し、音がつながります。「go on」は「go-on」となり、「the end」では「thee-end」と、前の単語の母音が長くなります。特に話す速度が速いときに、顕著に現れやすいパターンです。
「I agree」のように、2つの単語が1つの単語のように聞こえることも珍しくありません。場合によっては滑らかな発音を助けるために、半母音が入る場合もあります。母音同士のリンクにより英語の発音は自然に聞こえるため、ネイティブレベルの発音習得には必須の技術です。
子音と子音がリンクするケース
子音と子音のリンクにより、スムーズな発音が実現可能です。単語間や単語内において子音で終わり、次の単語が子音で始まる場合にリンクする現象が起こります。「best time」というフレーズで「best」の「t」と「time」の「t」がつながり、まるで1つの単語のように聞こえます。
同じ子音が続く「big game」のような場合にもリンクして聞こえるでしょう。子音と子音のリンクは流ちょうな会話において効果的です。
tやdがはじき音となるケース
tやdのはじき音は「t」や「d」がタップする「d」のような音への変化を表します。「city」の「t」がはじき音となり「ciddy」として聞こえるケースがはじき音の一例です。
一般的にアメリカ英語では「water」の「t」がはじき音になり「wadder」と発音されます。「party」の「t」もはじき音でなので「pardy」と聞こえるでしょう。「Internet」においては、初めの「t」がはじき音となり「Innernet」と発音されます。
「t」や「d」のはじき音が理解でき、聞き取れるようになるとリスニングスキルが向上します。
英語のリエゾンを学ぶメリット
リエゾンの習得によって得られる主なメリットは、下記のとおりです。
- リスニング力が向上する
- スピーキング力が向上する
スピーキング力が向上すると、コミュニケーション能力にも良い影響を与えます。英語の詩や歌詞の韻律、テンポがわかるため異文化間のコミュニケーションがスムーズに進むでしょう。
リスニング力が向上する
リエゾンを学ぶとリスニング力が向上します。リエゾンの理解によりネイティブスピーカーの発音のニュアンスがわかり、英語のリズムと速度が体感できるからです。アクセントや方言に対応できるリスニング力が習得可能です。
高度なリスニングテストや実際の英会話での聞き取りも容易になります。英語を自然な速度で聞くことで、ネイティブスピーカーとのコミュニケーションがスムーズとなり、英語力の向上が期待できます。
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スピーキング力が向上する
スピーキング能力の習得は、日常会話での自然な発音において重要です。言葉のつながりがスムーズになり、ネイティブスピーカーと同じ速度で会話ができるようになります。
スピーキングはコミュニケーション能力においても効果的に働きます。リエゾンの習得により表現が豊かになり、細やかなニュアンスが伝えられるからです。
» 英語のスピーキング力アップ方法
英語のリエゾンの練習方法
リエゾンの効果的な練習方法は下記のとおりです。練習を重ねて、自然なリエゾンが使えるようになりましょう。
- ディクテーションを用いたリスニング練習
- シャドーイングを使ったスピーキング練習
- 英語ネイティブの音声素材を活用した実践的練習
ディクテーションを用いたリスニング練習
ディクテーションは、英語のリスニング力を高めるための効果的な練習方法です。英語の音声を聞きながら書き取ることで、聞き取り能力が鍛えられます。聞き取れない部分は何度も聞き返し、理解を深めることが大切です。
ディクテーションで書き取った内容は、スクリプトや字幕を参照すると内容を確認できます。ディクテーションを通じて聞き取りの正確さがチェックでき、間違えた部分の修正により理解が深まります。特にリエゾンが使われている部分に注意を払えば、リエゾンに対する理解も深まるでしょう。
ディクテーションを繰り返すとリスニング力が向上し、スムーズに英語が聞き取れるようになります。
シャドーイングを使ったスピーキング練習
シャドーイングもリエゾンの練習方法として効果的です。シャドーイングはネイティブスピーカーの音声を聞きながら、合わせて復唱する技術です。リスニングとスピーキングのスキルが同時に向上します。
シャドーイングにより英語の自然な発音パターンやイントネーションがわかります。リエゾンを意識しながら練習することで、より効果的にスピーキングが習得できます。
シャドーイングは短いフレーズから始め、少しずつ長い文に挑戦するといった段階を経た練習が効果的です。口の動きを観察しながら行うと、さらに発音の正確性が高まります。徐々にスピードを上げていき、ネイティブの速度を目指してください。
英語ネイティブの音声素材を活用した実践的練習
英語ネイティブの音声素材の活用は、リエゾンの理解や実践的な練習を行う上で効果的です。さまざまな音声素材の使用で、リアルな英語のリズムやイントネーションが体感できます。素材は以下から幅広く選択すると、より高い効果が得られるでしょう。
- ポッドキャスト
- オーディオブック
- 映画のセリフ など
リエゾン部分を繰り返し聞くことで、音の連結パターンがわかるようになります。音声素材を使ったディクテーションも、実践的な練習として有効です。リエゾンを含む自然な英語力を習得できます。
ロールプレイの実施もリエゾン習得におすすめです。英語を用いたコミュニケーション能力向上には、言語交換アプリの利用も検討してください。ネイティブスピーカーと会話する機会を持つと、リエゾンに対する理解が深まり、実際のコミュニケーションにも活用できます。
音声素材を用いた練習はリエゾンが身につくだけでなく、リスニングとスピーキングのスキル習得につながります。
まとめ
英語の発音技術であるリエゾンを学ぶことは、英語力の向上に欠かせません。リエゾンの基本ルールを押さえれば、音の連結や脱落、同化といった異なるリエゾンが使い分けられます。
具体的な練習方法としては、ディクテーションやシャドーイング、ネイティブの音声素材の活用が効果的です。適切な練習により、リスニングとスピーキングスキル両方の向上に役立ちます。リエゾンについて理解を深め、実践的な練習を積むことで、自然な英語表現が身につくでしょう。
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